少し前までは、見つけることも、写真をとることもむずかしかった鳥がこのサンコウチョウです。日本には夏鳥としてやってくるヒタキの仲間です。
サンコウチョウという名前、漢字で三光鳥と書きます。鳴き声が「月、日、星、ホイホイホイ」と聞こえることから、三つの光の鳥です。英語ではパラダイス・フライキャッチャ。フライキャッチャはヒタキ科の仲間に与えられた共通名。この鳥にはパラダイス、つまり「天国」の名が付けられました。
オスは写真の通り長い尾を持っており、目のまわりが鮮やかな青色です。くちばしも青く、なかなか見ることができませんが、口の中は鮮やかな緑色です。長い尾をひらひらさせて飛ぶその姿は、天国の鳥と呼ぶにふさわしい美しさです。
近年、枝打ちもされずに放置されたスギ林があちこちに増えました。暗いスギ林なんて、生き物が好んで住むようには思えません。
ところが、サンコウチョウはこのような暗い森が好きなのです。よく手入れされたかつての里山のような明るい森には住みません。枝が込み入ったスギ林の空間では、長い尾が枝の一部のようになり、黒い体や白いおなかは、スギ林の影や光に紛れてしまいます。
写真はスギ林に作られたサンコウチョウの巣です。枝の又(また)の部分に木の皮やコケなどをクモの糸でつなぎあわせ、カップのような巣を作ります。
巣に座っているのはサンコウチョウのメスです。オスと同じような色をしていますが、オスのような長い尾はついていません。
鳥の写真をとり始めた頃、サンコウチョウはあこがれの鳥の一つでした。それが、今ではあちこちのスギ林から「ホイホイホイ」の声を聞くようになりなりました。
人が手入れをしなくなった暗い森。そんな森は、サンコウチョウにとって、まさに天国だったのです。
写真と文 コウノトリ市民研究所 高橋 信