先日、NHK日曜夜の番組「ダーウィンが来た」でチュウヒの話をしていました。見た人も多いでしょう。豊岡盆地にも冬鳥としてチュウヒはまれにやってきますが、観察する機会はほとんどありません。
同じ仲間のハイイロチュウヒは、毎年ここにやってきて冬を過ごします。飛来数は多くありませんが、今年の冬は例年になく観察数が多いようです。
チュウヒとハイイロチュウヒの行動パターンはよく似ています。河川敷のヨシ原や田んぼの上を低空でゆっくり飛び回ります。ハイイロチュウヒは、この写真のとおり、腰に明らかな白い帯がでます。これが一番の識別ポイントになります。
ハイイロチュウヒの飛び方の秘密はV字に開く翼。これで低空でも失速しないで飛び続けられます。不規則にフワフワと飛び続け、獲物を見つけるとそのままドスンと地上に落ちるようにして獲物を捕まえます。
田んぼでスズメを食べているハイイロチュウヒです。顔つきや頭の構造は、フクロウに似ています。昼と夜と行動時間が違うことを除けば、同じような餌の採り方をすることから、体の構造が似てきたのでしょう。
さて、ハイイロチュウヒの話をしてきましたが、名前の由来の灰色はどうなっているの?
先の3枚の写真はメスです。腰の白い帯を除けば、遠目にはトビと間違えそうなほど地味な茶色です。この写真も、最初はメスだとばかり思っていましたが、よくよく見ると、尾羽の上面が灰色であることに気づきました。これはオスの幼鳥です。
さて、いよいよ真打登場。ハイイロチュウヒの成鳥オスです。
どうです、これで名前の由来がわかったでしょう。まさに灰色です。
ハイイロチュウヒの成鳥オスは、野鳥観察をする人の憧れのひとつ。メスや幼鳥は観察できても、成鳥オスはめったに見ることができません。飛来数が極端に少ないのが一つと、広い行動範囲を常に低空飛行で移動し、休むときは地上のブッシュの中で行うため、なかなか人目につかないのも理由です。このときは運がよかったですが、同じ場所で一日中待っていても出会える保証はありません。
全身灰色の体にキラリと光る黄金のタカの目。英語でチュウヒのことをハリアーといいます。日本の車にこの名前が使われているのも、精悍なこのタカのイメージから来ているのでしょう。ちょっとしたエピソードとして紹介しておきます。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信