コミミズクとならんで、円山川で越冬するフクロウの仲間にトラフズクがいます。トラフズクはコミミズクより少し大きく、耳のように見える飾り羽が長いのが特徴です。また、コミミズクの目は黄色ですが、トラフズクはオレンジ色をしています。
コミミズクは毎年のようにやってきますが、トラフズクは数年に1度のペースで飛来する比較的珍しい鳥です。
前回トラフズクを観察したのは2008年の冬でした。写真はそのときのものですが、このように、込み入ったヤナギの枝の中に隠れて日中は眠っています。
トラフズクは集団で飛来します。群れが同じ場所でねぐらをとっており、2008年の観察時には8羽のトラフズクを確認しました。少し離れた別のヤナギの木には4羽のグループも見つけました。
2011年の冬は、2008年以来、3年ぶりのトラフズクの飛来を確認しました。同じ場所で3羽を数えましたが、あちこちに散ばってグループごとに集団行動をしていると思われました。
この写真、ヤナギの中に2羽のトラフズクが寝ているのですが、さて、見つけることができるでしょうか?
そっと近寄ってみると、目を覚まして警戒します。普通は昼間にこのような状況で観察することはできませんが、このときに限って、近寄って写真を撮らせてもらったのでした。
オレンジ色の大きな目と、羽角(うかく)と呼ばれる頭の長い飾り羽が魅力的なフクロウです。
飛んだときの写真ですが、昼間に飛ぶことはまずありません。コミミズクに比べ、重そうにゆっくり飛びます。コミミズクは下から見上げると真っ白に見えますが、トラフズクは茶色っぽい白に見えます。
日が暮れるまで活動をしませんが、この日は夕方に活動を始めるトラフズクがいました。ヤナギの枝にとまって雪に覆われた河原をしきりに気にします。雪の中からネズミの出す音を聞き取ったのでしょう。落ちるようにして雪の中に突っ込んでゆきましたが、狩りは失敗に終わりました。
すぐに、今度は堤防の斜面に向かって突っ込んでゆきましたが、このときもネズミを捕まえることができませんでした。コミミズクのネズミ狩りは成功率が高いですが、トラフズクはそれに比べると餌取りの効率が悪そうに見えました。
さて、3年前と今回と、河川敷の環境を比べてみると、流域のヤナギの数が大きく減っていることが分かります。洪水時の障害物という観点から伐採されたのですが、ヤナギをねぐらや止まり木に使っているトラフズクにとって、円山川はずいぶん住みにくい場所になったと思います。それでもなお、越冬のためにやってくるだけの自然環境を、円山川はまだ失っていないということでしょう。
大雪が続き、円山川で餌を取ることができなくなったトラフズクは、残念ながら別の場所へと移動してしまいました。数年後、再びトラフズクが円山川にやってきたとき、今年よりさらにヤナギの木が減ってしまったということがないよう、トラフズクになり代わってお願いしておきます。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信