アカショウビンはカワセミ科の鳥です。形をみればカワセミやヤマセミと同じ仲間であることが分かります。くちばしが太長く足が極端に短い姿は愛嬌があります。
カワセミは都市部から山麓までの河川や池に広く分布しています。ヤマセミは人里離れた河川中流域から渓流にかけて暮らします。そしてこのアカショウビンは森の住人です。
ブナ林を好み、立ち枯れの木に穴を開けて巣を造ります。ブナ林にはいくつもの小さな沢があり、そこで暮らすカエルやサワガニなどを餌にしています。
この写真はトカゲを獲ったところです。カワセミがやるように、アカショウビンもくちばしでトカゲを木に打ちつけて、弱らせてから丸飲みしました。
食後はお気に入りの木の上で休みます。くちばしにさきほど食べたトカゲのウロコが付いています。
アカショウビンは名前の通り赤い鳥です。この写真で、アカショウビンの腰のあたりに注目してください。赤い羽根を割って水色の羽が見えていますね。この水色はなかなか見えないのですが、アカショウビンの特徴のひとつです。
観察した森はアカショウビンの繁殖地です。つがいのアカショウビン2羽がブナ林を行き来していました。「キョロロロロ…」と尻下がりに鳴く独特の声は、ほかの鳥と間違うことはまずありません。
しきりに相手と鳴き交わしをしていたアカショウビンは、「キョロロ・キョロロ」と短く鳴きながら森の奥深くへと飛び出してゆきました。森の緑に、アカショウビンの赤は鮮烈な残像となって残りました。
今期、但馬のアカショウビンの飛来数は例年に無く多く感じました。山の中まで行かなくても、谷沿いの道路を車で走っていると、すぐ近くの林からアカショウビンの鳴き交わしが聞こえてきました。
今、アカショウビンは繁殖期を終え、巣立った子どもたちを見守りながら残りの夏を静かにすごしています。アカショウビンの声が但馬の山に響くのはまた来年の春です。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信