この夏、豊岡市内で久しぶりにスズミグモが観察されました。近年、南方系のこのクモの但馬エリアでの目撃例が増えてきています。
7月24日の初観察時には、スズミグモは脚の付け根の一部が赤いだけの未成熟の状態でした。このクモの最大の特徴は、大きなドーム状の網を空中に吊り下げることですが、このときのドームは未だ小さなものでした。
1週間経った7月31日のスズミグモです。腹部の中央が赤くなってきました。両肩の突起が目のようで、スズミグモの腹は人の顔に見えます。
8月13日には、このように美しく変身を遂げていました。スズミグモの成熟したメスの姿です。
この写真ではドームの網目にも注目してください。おなじみの同心円状の網ではなく、非常にこまかい格子状の網であることがわかります。まるで魚網のようです。
夜に撮影したスズミグモのドームです。木の枝から伸びた多数の縦糸がドームを吊り下げ、ドームの裾も何本もの道糸で枝につながれています。
スズミグモの網には粘着力がなく、獲物はドーム上部の縦糸のジャングルで動きを封じられるとドームの上に落下し、それをすばやく捕まえるという狩をします。
9月10日には腹の中に卵を抱いており、腹部が大きくふくれていました。残念なことに、産卵して卵のうを残すことなく、このスズミグモは姿を消してしまいました。
同じエリアの少し離れた場所でスズミグモのオスも確認しました。何組のペアがいたのかは不明ですが、子孫を残して繁殖が続いているものと思われます。
もともと但馬にはいなかったスズミグモが、今はまだ珍しいレベルですが、今後はよく見かけるクモになってゆくかもしれません。クモの好きな人は多くないと思いますが、地球温暖化の影響でこんなクモが但馬にも出るようになったことを知ってください。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信