ハルユキノシタ ユキノシタ科
但馬にこの仲間が数種類自生しています。
ユキノシタ、ダイモンジソウ、ナメラダイモンジソウ、ジンジソウです。ユキノシタは初夏に、他は全て秋に花が咲く種類です。どれも姿形が似ていてユキノシタの仲間であることは一目瞭然です。この中で、ユキノシタだけは、葉に模様があります。他の3種は、光沢のある葉をしています。
ハルユキノシタは、図鑑には、日本固有種(日本列島にしか生育しない種類の生きもの)で、本州の関東地方から近畿地方の山地の岩上に生えると書かれています。生育する範囲の端にある新潟県 滋賀県 京都府では数が少なく、絶滅が心配される植物として扱われています。京都府では、北部の丹後地方にわずかに知られています。
兵庫県では、これまで発見されておらず京都府が分布の西限と考えられています。
ところが、あるところで地元産というハルユキノシタが売られていました。
「その地元というのは但馬ですか?」と私は店のご主人に尋ねました。
「そうだ。」と即答されました。
「兵庫県にはないとされているのですが・・・・」と重ねて尋ねると
「自分で採ったので間違いない。」と言われます。詳しい場所を尋ねると
「採ったのは元気だった若い頃の話だし、台風23号の増水で家が浸かり、地図をなくしてしまったので分からない。」とおっしゃいます。
それでも懸命に思い出そうとされて、いくつか候補地を教えていただきました。
その時に、「がんばってくれ。」とおっしゃって、いただいたのが写真の株です。それからもう数年たちますが、未だ教えていただいた場所を訪れきれていません。
4~5月にこんな花があれば、間違いなくハルユキノシタです。きっと滝の近くの岩壁などに生えています。花が終わっても、葉で分かります。ピカピカ光る丸い葉ならハルユキノシタです。
秋に花を咲かせるダイモンジソウ、ナメラダイモンジソウ、ジンジソウも光る葉ですが、まん丸ではなく深い切れ込みがあります。
もし見つけられたらこっそり教えてください。なんと言っても園芸やさんに売っていた植物です。盗掘により絶滅する可能性があります。発見されれば、分布の西限を更新するのですから、個体数も限られています。見つかった瞬間に絶滅危惧種です。
そのお店には、ハルユキノシタ以外にもイブキジャコウソウなどの兵庫県新産と思われる植物が数種類売られていました。それらが本当に兵庫県新産の植物なのかは謎のままです。