田んぼで小鳥の大きな群れが飛び回っているのに気づきませんか? 冬が近づくと小鳥は群れを作って身を守るようになります。スズメの群れが一番馴染み深いです。次に「キリコロ」と鳴き交わしながら、ウグイス色に黄色いワンポイントが見えたら、それはカワラヒワの群れです。
今回の注目種はアトリ。年によって飛来数が大きく変化する冬鳥のアトリは、スズメやカワラヒワより大きな群れを作って、まるで雲のように高速で移動します。群れが翻ったときに、白いお腹や橙色の羽に気づいたら、それはアトリの群れに違いありません。
アトリはスズメ目アトリ科の鳥で、アトリ科を代表する鳥でもあります。スズメとほとんど同じ大きさで、止ったときに見るとこんな姿をしています。草の上に止ったときはよく目立ちますが、餌をとるのに地面に降りると土の色に紛れてしまいます。
危険を感じると地上の群れはザーっと音と立てて飛び立ち、体の黒っぽい上面と白っぽい下面を群れ全体が一斉に反転させながら、電線などの安全地帯へ退避します。反転行動は天敵のタカの目をくらませるのが目的といわれています。
危険が去るとまた一斉に電線から飛び立ち、再び餌場へ降りてゆきます。アトリの大きな群れの飛翔姿を観察していると、群れそのものが一つの生きもののように見えてきます。
昨シーズンはまったくといってよいほどアトリ科の鳥を見ませんでした。年明けには記録的な大雪となりましたが、まるでそのことを予測していたかのように、秋になっても渡ってきませんでした。今年の秋は2年ぶりにアトリの群れをよく見ます。アトリ科の冬鳥は魅力的な鳥が多く、今年の冬鳥観察の楽しみが増えそうです。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信