たまには車に乗せてもらうのもいいものです。景色を見ながら移動できます。
このキイチゴは、そんな機会に見つけたものです。
鈴なり、木いっぱいに実がついています。自分の車なら即ストップで観察ですが、この日はそうはいきませんでした。
「すごい!!」「何イチゴだろう?」「ビロードイチゴ?」と自分の好きなキイチゴが頭に浮かびます。
再訪を誓って2週間、ようやく行ってきました。
予想と違って、コジキイチゴでした。うれしい誤算です。
コジキイチゴは、但馬ではなかなか見ることのできないキイチゴです。林縁にできた空き地に生えることが多いので、時間が経つとしばしば消えてしまいます。もともと数が多くない上に、生育地を移っていくので出会えることが少ないのです。
このコジキイチゴは、鳥居橋の掛け替えに伴って作られた道路の山付きの斜面に群生していました。多分、あと数年は見られると思います。
削られた斜面に育つコジキイチゴ。
こちらは、帰りに別の場所で見つけたコジキイチゴです。シラカシの下に生えていますので、本来(自然)の生育場所なのでしょう。しばらくは生育し続けるのだと思います。
日当たりはよくない。今までに見た中で最も暗い立地。
造成された日当たりのよい斜面に群生。2枚目の写真と同じ場所。
コジキイチゴは、茎に長い長い腺毛が密生します。この毛と小葉の多い葉だけでコジキイチゴと分かります。
長い腺毛と先がかぎ状に曲がったとげ。
小葉が9枚の奇数羽状複葉。
コジキイチゴは実をたくさんつけます。若い頃は細長いのですが、やがて膨らんで丸くなり橙色になります。中は中空で、袋状になっています。一つ、二つと食べるとそれなりにおいしいものですが、続けてたくさん食べようと思うほどのものではありません。コジキイチゴは、但馬産のキイチゴの中では、最も大きな実をつけますが、食味は低ランクだと思います。群生していれば、大量に収穫できます。ジャムなどに加工するのが利用法かも知れません。
コジキイチゴの「こじき」は、「乞食」ではなく、袋状の形から甑(こしき)が連想され、「こしき」→「こじき」と変化していったという説があります。実の姿形から フクロイチゴ(袋苺)の別名もあります
中は中空。なるほど袋状だ。