11月終わりの午後の後半に差し掛かる頃、農地が近くにある住宅街に沿った電線に、1羽のサギが止まっていました。第一印象はゴイサギの子供かな。いや、いや、ひょっとしてヨシゴイか? しばらく逡巡するうちに、10年前の出会いの記憶が蘇りました。アカガシラサギだ!
大慌てで撮影態勢に入る頃には、相手は飛び出す寸前でした。飛んだ! 閉じていた時には地味目に見えた翼がパッと真っ白になって、アカガシラサギの特徴がよくわかります。
すぐに地上に降りたので、あたりを探しますが、なかなか見つけることが出来ません。ようやく用水路に入っているところを見つけました。
アカガシラサギは大陸のサギで、渡りの途中、ときどき日本に迷い込むことがありますが、観察例はごく稀です。名前の由来は、夏羽の頭頸部が赤紫色をしているからですが、今回観察したのは冬羽個体です。頭頸部の赤は見られませんが、なかなか魅力的なデザインのサギです。
大きさはカラスほどで、サギの仲間でも小さい方です。1時間ほどの短い観察時間で見失い、翌日以降は見られませんでした。なかなか出会うことのない珍しい水鳥ですが、今回のように、たまたま電線に止まっていたから見つかったものの、人知れず、ひっそりと水路の隅っこに隠れているのに気づかないでいるだけかも知れません。
10年前の観察も同じ時期の冬羽個体でした。今度はぜひ、赤い頭の夏羽のアカガシラサギを見てみたいものです。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信