2012年にマダイオウを一株発見したことを以前書きました。その時点で、兵庫県ではしばらくぶりの再発見で、兵庫県で唯一の株かもしかないということを書きました。
今年、2013年、4月、知人の車に乗って、別の植物を見に行く途中でこれは怪しいという葉を見つけました。マダイオウかノダイオウだろうと思いました。そして、そこが記録にある最初の発見地なんだろうなと思いました。
5月25日 周りにあって花が咲いているのは、スイバ。
マダイオウを最初に見つけられた方は、都会の方です。標本に記された採集地名は、隣の集落のものですが、間違っていた可能性が高いと思います。今回の発見地が、標本の採られた場所だとすると、そこは二つの集落の境界辺りなので間違えても無理はないという場所です。私も自信がなく地元の方に確認してようやく地名が確定したという難しい場所です。
発見地は人通りの多い場所で、私自身、これまで数限りなく通っていた道の脇です。目的を持って植物の調査に入るような場所ではなく、都会の方が観光の際にたまたま通りかかって目に留めたというような場所です。
5月25日 黄色い花は外来種のキショウブ。マダイオウは左手奥に生育する。
私は、自分が2012年に見つけた場所が山奥であり、外来種が見られない場所であったので、昨年は、記録に残る地名の中心部から自然度の高そうな場所に向けて、要するに山に入っていって、探したのですが、見つけることができませんでした。探していたマダイオウは、思いがけず集落の外れの非常に人臭い場所にあったのでした。
5月25日 つぼみができた。外来種のヒメジョン、アカツメクサ。
6月22日
6月22日 このギザギザは、マダイオウだろう。
5月に見に行くと開花が始まっていました。おそらくマダイオウで間違いないだろうと思いました。6月に行って驚きました。きれいに草刈りをされていて、2株しか見あたりません。少し離れたところにあって刈られていない株の果実を見て、まずマダイオウで間違いなかろうと思いました。9月には、刈られた場所からマダイオウが再生しており、葉が広がっていました。適度な草刈りによって生き残ってきた可能性があるなと思いました。
6月22日。きれいに刈られた。こんな管理をしてほしい場所がたくさんある。
7月31日 草刈り後に出てきた葉。
昨年、私が見つけた一株は、7月に見に行くと根こそぎ姿を消していました。ということで、今回の発見地が兵庫県唯一の生育地ということになります。
救いは、10株以上の個体群として生育しているということです。しかし、懸念はたくさんあります。一つは管理の仕方です。草刈りのために、種子が十分にできていません。2013年の場合、種子をつけたのは2株です。すでに土地を所有される方には保護上重要な植物が生えていること、草刈り等の管理を続けていただいたおかげで生き残ってきた可能性が高いことも伝えていただいています。これは大変に運のいいことです。一部を選択的に刈り残していただけると大量の種子ができると思います。
懸念の二つ目は、外来種問題です。生育地には、クレソン、ヒメジョン、アカツメクサ、キショウブなどの外来種がたくさん生えています。在来種が圧倒されそうな生育ぶりです。さらに問題なのは、道を挟んで生育地の反対側には、エゾノギシギシが、また、生育地側の100mほど西にはナガバギシギシが大量に生育していることです。どちらも外来種で、マダイオウと雑種を作ります。雑種化が進むとマダイオウの実態が失われてしまいます。エゾノギシギシとの雑種問題は有名で各地で問題視されていますが、京都では、キブネダイオウという植物を絶滅に追い込みました。キブネダイオウの場合は、幸いなことにかつて種子が大量に採集されていて、その種子から復活させる試みが始まっています。この地のマダイオウは、姿形はまだマダイオウらしいものですが、すでに遺伝子の一部にエゾノギシギシガ入っているかもしれません。早急に近くに生えているエゾノギシギシなどを刈り取る必要があります。
5月22日 外来種のクレソン。
三つ目の懸念はシカによる食害ですが、ここは、車の往来の激しい道沿いです。当面、大丈夫だろうと思っています。