マタタビ マタタビ科
但馬の山間部でこの季節(6月~7月)に、林縁に白い葉を見かけたらまずマタタビだと思って間違いないでしょう。マタタビは、マタタビ科のツル植物です。
マタタビは6月頃になると、一部の葉が緑から白に変化します。白い葉は、木々の緑の中で遠くからでもよく目立ちます。
マタタビは人に見てもらおうと思って目立っているのではありません。マタタビは昆虫にアピールするために葉を白くしているのです。
多くの植物は、目立つ花を咲かせて、昆虫の気を引きます。そして花にやって来た昆虫に受粉を助けてもらいます。マタタビも昆虫たちのお世話になるのですが、花ではなく葉を目立たてます。
昆虫は、大きくて目立つ白い葉を見て、花だと思ってマタタビに近づいてくるのでしょう。ところがやって来ると、そこにあるのは花ではありません。白い葉です。実は、花は咲いているのですが、上からでは葉の陰にあって見ることはできません。
見えないのですから、せっかく咲いていても、花は見つけてもらえないかもしれません。しかし、うまくできているもので、葉に近づいていくとよい香りがします。姿は見えなくても、この香りをたどっていくと、虫は見事、花に到着できます。マタタビの白い葉の周辺では、こんなことが起きているのだと思います。
葉は、花よりも大きいのでよく目立ちます。なかなかいい手だと思うのですが、こんなことをしている植物は、あまりありません。但馬では、他にハンゲショウがあります。
遠くからでもよく目立つ。
花が終わって、花が実になる頃、白かった葉は元の緑に戻っていきます。
「白い色素を作って、それを回収して・・・、すごい手間だろうな」と私は思っていました。ところが、色なんか作っていないのだそうです。表面の薄い皮を少し浮かせてそこに空気を入れることで白く見せているのだそうです。虫を呼ぶという白い葉の役目が終わったら空気を抜いて元通りになるのだそうです。これはこれでなかなか大変そうです。
近縁のミヤママタタビは、白から薄いピンクに変化しますので、こちらは空気+色素なんでしょうか?
正常な果実。塩漬けにして食べたり、果実酒にしたりする。
マタタビアブラムシが寄生し、形の変わった果実。木天蓼と呼ばれ、薬効がある。果実酒にもする。
ところで、マタタビといえば猫です。
もう40年近く前の話です。マタタビという植物を初めて見た私たちでも、「猫にマタタビ」というのは知っていました。なんとか「猫にマタタビ」を試してみたくなります。そこで、先輩にお願いして、家から猫を連れてきていただきました。
さあ、何が起こるのかと期待に胸を膨らませた私たちでしたが、その猫は、マタタビを無視しました。マタタビは、個人的にはそんな思い出もある植物です。