イッポンワラビ イワデンダ科
2014年に但馬でもいろいろな植物が見つかりました。イッポンワラビは、その中でも特別なものの一つです。イッポンワラビは、兵庫県版レッドデータブックでは、Aランクに指定されています。50年ばかり前に一度発見されただけの現状不明のほぼ幻の植物といってもよい植物でした。その植物が偶然発見されました。
ある希少な植物が見つかったということで見に行かないかと誘ってもらいました。
但馬の奥の方へ見に行きました。目的の植物の生育地とその周辺の何カ所かを見て回りました。一人の方が、自分では名前が分からないシダを採られました。それを人と自然の博物館へ送られました。それがイッポンワラビでした。
イッポンワラビは、実は、近畿地方では50年前に兵庫県で一度だけしか採られていないのです。博物館の方も、是非とも、現地で見てみたいということになり、もう一度、現地に行くことになりました。しかし、問題があります。採集された方が、どこで採ったのか覚えていないと言われるのです。
一カ所目、探しました。見つかりませんでした。
二カ所目、やはり見つかりませんでした。
最後の三カ所目、谷の奥に入りました。見つかりません。あきらめかけていた頃に、谷の入り口付近で見つかりました。採集された方が行かれていない場所でした。さすがに専門家です。数十株あるのだそうですが数種類のシダが一緒に生えていて、私にははっきりとは区別ができませんでした。
さらに探すと谷の奥にもごくわずかですが見つかりました。採集された方は、ここで採ったのかもしれないなあと言われていました。そうだとすれば、全く見事な偶然です。
イッポンワラビという名前からワラビのように食べられるのかなと思って調べてみると、確かに食べられます。山形県、宮城県を中心にアブラコゴミまたはアカコゴミの名で山菜として広く親しまれているのだそうです。
50年ぶりの再発見でした。似たような環境は近くにたくさんあります。谷を丁寧に見ていくとかなりあるのではと思いました。しかし、数m離れてところに鹿の食事跡が残っていました。今年は、シカはまだお好みの植物を選択的に食べている段階のようです。イッポンワラビは、人も食べられるシダです。食害に遭うのは時間の問題だと思います。植生保護柵であるとか、緊急避難であるとか何らかのことを早急に行う必要があると思っています。