スズメ、カラス、トビといった身近な野鳥がいますが、ヒヨドリもその一員として覚えてもらいたい鳥です。冬の間は山から里におりてきて、特に目立つ存在になります。英名で “Brown-eared Bulbul” の通り、「茶色い耳」が特徴のヒヨドリ科の代表。
晩秋の実りの季節には、柿の実を好んで食べます。冬の渡り鳥のツグミも柿の実が好物で、熟した実をヒヨドリとツグミが争うように食べるシーンをよく見かけます。
冬の間のヒヨドリの主食のひとつは、ウルシ科の実です。ハゼやヌルデなどの実は、ヒヨドリに限らず、多くの野鳥の冬の餌になります。
木の実が尽きると、ヒヨドリは農地の畑にやってきます。ハクサイなどの葉物は、ヒヨドリの恰好の餌になります。春キャベツが育つ頃には、キャベツもやられます。農家にとって、害虫の活動の弱まる冬の間でさえ、こういった野鳥や獣から作物を守らなければならない苦労があります。
3月後半、早咲きの桜が咲くとヒヨドリが蜜を吸いにやってきます。梅や椿といった早春の花には、ヒヨドリが好んで飛来します。
早春のヒヨドリのくちばしには、黄色い花粉がたくさん付いていることに気づきます。この季節、虫に代わって花粉を媒介するのは鳥です。ヒヨドリがその代表的な存在であることを知れば、自然界の営みの妙に思いを寄せるきっかになることでしょう。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信