ツリガネタケ ヒダナシタケ目 タコウキン科 ツリガネタケ属
釣鐘茸 (Fomes fomentarius)
サルノコシカケの仲間。しかし名前の通り釣り鐘型になるのでサルが腰かけるには具合が悪そうである。小型で群生するタイプと大型で単生することが多いタイプがあり、両者を別種とすべきかどうかの議論があるようだ。
強靭なフェルト質で年々下方へ成長するので外見は多層構造になる。広葉樹の枯木、倒木に発生。北半球世界的に発生。
無理やりはがした痕
肉は縦に強靭な繊維でできており、年々の成長にもかかわらずほぼ一直線に繊維は伸びている。
このキノコ、昔は人間の生活で重要な役割を果たしていたらしい。学名は火口(ほくち)という意味。ヨーロッパではフェルト質の肉をほぐして、火打石で火をおこすとき、最初に火を燃上がらせるために用いられたとのこと。ためしに肉を少しちぎってライターで火をつけてみると、炎は立たないが小さな火は決して消えない。一分間に5㎜程度、ゆっくりと燃えていく。それを使ってタバコに火をつけることもできた。
現代のようにライターやマッチがない時代であれば、火口(ほくち)や種火の移動などなどで重宝したであろうことが想像できる。ヨーロッパの氷河で発見された約5000年前のミイラ「アイスマン」の所持品にも入っていたというから驚きである。我が国でも地方名で「ホクチタケ」と呼ばれるキノコがあるが、こちらはより一般的なシロカイメンタケやマスタケを指す場合が多いようである。
ついでに書くと、我が国のほくちは、ガマの穂やホクチアザミ、オヤマボクチなどがよく使われ、ほくちに利用できる植物などが生活に密着し、重要であったことが分かる。