2月半ばの竹野浜で、とても珍しい海鳥を間近に観察するチャンスがありました。まずはウミスズメです。チドリ目ウミスズメ科の鳥で、海岸から離れたはるか沖合で海上生活をする仲間です。
今回、浜辺近くに寄ってきたのは理由があります。おそらく、大型魚に追われて浜まで逃れてきたカタクチイワシの大群に、それを餌としている海鳥が一緒に付いてきたのです。
ウミスズメはスズメの名がありますがスズメより大きく、ツグミぐらいのサイズです。黒と白のモノトーンの羽は、夏羽では喉の周辺も黒くなって顔の黒とつながります。夏羽移行中の個体もたくさん見かけました。
潜水採餌をするウミスズメの足は尾羽の真下あたりに小さく付いており、水面を蹴ってすぐに水中に突っ込んで行きます。水中での推進はもっぱら翼を使い、「海の中を飛ぶ」鳥といったイメージがふさわしいです。
ウミスズメの大きな群れに混じっていたのが、沿岸では非常に珍しい観察例になるウトウでした。ウミスズメ科の仲間ですが、ウミスズメより大きくコガモくらいのサイズです。
北海道の天売島がウトウの有名な繁殖地で、北海道周辺の海にいる鳥のイメージが強いですが、今回の観察から、山陰海岸の沖合でもウトウが生息していることを認識させられました。ユニークな顔つきが印象的な海鳥でした。
もう一種、カタクチイワシに付いてきたのがミツユビカモメです。これも沖合で暮らす海鳥で、沿岸で普段目にすることのないカモメです。ウミスズメが潜水採餌するのに対し、カモメは水面近くの小魚をくちばしで捕まえます。
カタクチイワシの群れは徐々に縮小拡散した様子で、1週間ほどでこの騒ぎも収まって行きました。珍しい記録でした。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信