ウスゲチョウジタデ　若い葉や枝に細い毛がある。花盤に白い毛が密生する。花弁・がく片などは５（まれに４，６など）。花弁の大きさは小さいものから大きいものまであるが、チョウジタデよりは大きく、花弁の幅が広くて隙間がない。茎は緑色をしている。秋になっても真っ赤にはならず朱色になる。
　ウスゲチョウジタデは、2002年に発見された兵庫県新産の植物です。
　最初に発見されたのは治水対策のために掘削が行われていたひのそ島です。当時、ひのそ島では、保護上重要な植物が多数確認されており、それらの保存のために表土を播きだした試験湿地を作って再生実験が行われていました。その調査報告書がウスゲチョウジタデの初出ですが、内部資料なので一般には知られていませんでした。

チョウジタデ　　　　若い葉や枝に毛はない。花盤に毛はない。花弁・がく片などは４（５のものある）。花弁の大きさはそろっており、小さい。花弁の幅は狭く隙間がある。茎は赤みを帯びる。秋になると真っ赤になる。

ウスゲチョウジタデ
　ウスゲチョウジタデは、それまでにひのそ島で行われた調査では一度も見つかっておらず想定外の植物でした。このときには同じような経緯でヒメシロアサザも発見されています。
　以後、ウスゲチョウジタデは、ひのそ島でだけ生育が確認され、円山川本流では発見されていませんでした。どうやら、ひのそ島にしかないらしい、と私は思っていました。それが否定されたのが、2008年でした。
　どのような形態のワンドを作れば最も効果的に自然再生ができるかを試験するための湿地が円山川本流に造成されました。そこの植物相を調べようと出かけたときに、明らかにチョウジタデとは違うよく似た植物を見つけました。私が初めてウスゲチョウジタデに出会った瞬間です。

チョウジタデ
　その頃、調整水田の植物を調べていて、武田義明・松井美穂．2005．但馬地方の水田の植生と絶滅危惧種．関西自然保護機構会誌に出会いました。その中に「ガマ－ウスゲチョウジタデ群落」がありました。そこには円山川下流域の調整水田にある群落であると書かれています。2003年の調査です。これが兵庫県にウスゲチョウジタデが生育することを示す最初の文献です。
　ウスゲチョウジタデは、川ではなく水田に生えていたのです。驚きました。

ウスゲチョウジタデ
　2008年9月27日から下流域の水田を調べてみることにしました。最初に出かけたのは、城崎町の中之島です。ここの水田は、タウコギなどの保護上重要な種が多いところです。ひのそ島に最も条件が近い水田です。ウスゲチョウジタデが大量にありました。ここでウスゲチョウジタデの特徴をつかみ、水田巡りをしました。

中央；チョウジタデ　両端；ウスゲチョウジタデ　花の大きさと形に注目
　数回の調査の結果、円山川下流域の水田では、ウスゲチョウジタデは普通に生えていることが分かりました。チョウジタデに比べると個体数も生育場所も少ないが、特別な保護をしないといけないような生え方ではありません。

真っ赤なのがチョウジタデ　赤が薄いのがウスゲチョウジタデ

両種は隣に生えていることもあります。どんな条件の違いで棲み分けているのか分かりませんが、ウスゲチョウジタデは、円山川の近くの水田にしか生えていません。円山川から離れると見つかりません。また、下流域ではないと川の近くでも生えていません。一方、チョウジタデは、但馬の水田や湿地に広く生育しています。
　ウスゲチョウジタデは、2010年に気比川の下流部の2枚の田んぼでも確認できました。
　現在、ウスゲチョウジタデは、兵庫県では、円山川下流域と円山川と気比川の下流域の水田でのみ生育が確認されています。ＨＰ上の情報によれば、近畿地方では、兵庫県と滋賀県にわずかに生育します。
　円山川下流域では、普通に生育し、個体数も多いので、絶滅が心配される状況ではありませんが、生育範囲が限られているために、最新の兵庫県版のレッドデータブックではＣランクの絶滅危惧植物に指定されました。
　2011年は、竹野川、矢田川、岸田川も調べてみたいと思っています。

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水田のウスゲチョウジタデ調査
調査地点では、2～3枚の田んぼの縁を合計で20ｍ～40ｍ程度歩いて確認する。
次の調査地点とは、1ｋｍ以上離す。
植物体が緑で、ルーペでわずかに毛が認められたものをウスゲチョウジタデとする。
確認したものは採集し、標本にした。
緑●　ウスゲチョウジタデが認められたポイント。このポイントには全てチョウジタデも認められた。
赤●　チョウジタデのみ認められた。
×　チョウジタデもウスゲチョウジタデも認められなかった。