食物連鎖(しょくもつれんさ)というむずかしい言葉があります。英語のフード・チェーンの方が理解しやすいかも。自然界の生き物は「食う」「食われる」の関係で、鎖(くさり:チェーン)のようにつながっているという意味です。
つまり、土の中のバクテリアを虫が食べ、その虫をカエルが食べ、そのカエルをヘビが食べ、そのヘビを鳥が食べというようにつながります。この鎖のどこかが断たれると、それより上位の生き物が暮らせなくなります。
豊岡盆地のコウノトリは、フード・チェーンの頂点に立つ生き物の一つです。コウノトリが暮らせるということは、コウノトリの餌となる生き物がたくさんいるからです。つまり、豊岡盆地は様々な生き物がすむ豊かな自然環境があるということです。
さて、六方田んぼに出てみましょう。田んぼ道に沿って電柱が並んでいる場所では、電柱の先を見上げてよく観察してみましょう。カラスやトビが(もちろんコウノトリも)止まっていることが多いですが、「あれっ!?」と思う鳥が見つかるかも。
気づくコツは、翼の裏側、胸からお腹にかけて白っぽい、ということです。なれてくると、遠くからでもシルエットだけで分かるようになります。
この鳥の名前はハヤブサ。おどろかさないようゆっくり近づいてみると、飛ばずにじっとしてくれることがあります。そんなときは双眼鏡でしっかり観察しましょう。
ハヤブサは白と黒のかっこいい鳥です。黒いマスクをしたような精悍(せいかん)な顔つき。くちばし、目の周り、足が黄色。大きくするどい爪で、餌となる鳥を捕まえます。
この写真を撮ったのは、ハヤブサがちょうど獲物(えもの)を食べ終わったところでした。食べられたのはケリというチドリのようでした。電柱の上で鳥を丸ごと食べつくしてしまいました。お腹のあたりが汚れていますが、血がついたあとです。
食べ終わってすっかり満足すると、ハヤブサは翼をすばやくひるがえして、猛スピードで一直線に飛び去ってゆきました。ハヤブサの飛行速度は時速200キロを越えるともいわれます。鳥の中ではもっとも早く飛びます。
さて、フード・チェーンの話に戻りましょう。冬の六方田んぼにはたくさんの鳥が集まってきます。餌となる食べ物が豊富だからです。その鳥をハヤブサが襲います。虫がいるから鳥がくる。鳥がくるからハヤブサがくる。
六方田んぼは、たくさんの生き物でにぎわう「レストラン」なのです。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信