冬の円山川ヨシ原を見てまわるのは、野鳥観察の楽しみのひとつです。ホオジロ、ヒワ、カラの仲間が寄ってきます。そして、とうとう大物を見つけました。
どうです、この姿。枯葉色の羽根は地味ですが、フクロウの持つ独特の雰囲気、特にピンと立った耳のような飾り羽根が魅力的です。この飾り羽根のことを羽角(うかく)と呼びます。
トラフズクというフクロウ科の冬鳥です。フクロウの中でも小型で羽角を持つものをミミズクと呼んでいます。豊岡盆地で越冬するミミズクとしては、このトラフズクと、一回り小さいコミミズクの2種類がいます。いずれも数羽単位の集団で越冬します。
フクロウは夜行性。トラフズクも日中はヨシ原のヤナギの枝に止まって、じっと動かず眠っています。トラフズクが休んでいる場所は、ヤナギの木の下の方と決まっています。ヨシの穂先がヤナギと絡んでいる部分を選んで、そこに止まります。
トラフズクの羽根を見てください。それは、枯れたヨシの葉にそっくりです。ヤナギの下枝に止まることで、トラフズクはヨシの一部となって風景の中に完全にとけ込んでしまうのです。天敵に見つかることはまずありません。
夕方になるとトラフズクは目を覚まし、狩の準備を始めます。彼らの獲物は河原の野ネズミ。暗闇の中で、音だけを頼りに野ネズミを探し当て捕らえます。フクロウ科の鳥の顔は、音を集めるためのパラボラアンテナのような役目をしています。
円山川へのトラフズクの飛来は稀(まれ)です。今回は台風23号の洪水被害をはさんで、4年ぶりの飛来確認となりました。河川改修工事が正月休みで止まっている間の短い滞在でした。やがて工事が終わり河川敷が静かになれば、トラフズクが越冬場所として使ってくれる可能性があります。そのためには、ヨシ原とヤナギ林を守って行かなければなりません。
(写真はクリックで大きくなります)
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信