4月、東南アジア方面で冬を過ごした渡り鳥は、生まれ故郷(こきょう)めざしていっせいに移動を始めます。地図もコンパスも持たない渡り鳥が、いつも正しく目的地に向かう能力はたいしたものです。
渡り鳥の移動の能力については、様々な研究がなされています。地球の磁気(じき)を感じる器官(きかん)がある。太陽や星の位置から飛ぶ方向を定める。また、目で地形をしっかり記憶していることも確かなようです。
これはノビタキのオスです。4月にはいるとすぐに円山川の河原に姿を見せる渡り鳥。ノビタキは本州中部地方より北の山地で繁殖(はんしょく)し、東北・北海道では低地の草原で子育てします。
このあたりでは、4月の中旬までノビタキがみられますが、後半になるほどオスの数は減って、最後はメスだけになります。オスは真っ先に繁殖地(はんしょくち)に戻り、子育ての場所を選びながらメスを待つのです。
ノビタキが通過したあとにやってくるのがコムクドリです。この鳥も本州中部から北が繁殖地です。特徴的(とくちょうてき)な顔つきをしており、背中の色は金属のような光沢(こうたく)があって美しいです。
コムクドリは数が少なく、なかなか見る機会がありませんが、確実に円山川を通ってゆきます。毎年同じ場所で、しかも同じ木で観察するからおどろきです。
これはノゴマというツグミの仲間です。ツグミ科の鳥は茶色い地味(じみ)なものが多いですが、ノゴマもその例にもれません。でも、ノゴマのオスはひとめでノゴマとわかります。喉(のど)にあざやかな赤い模様(もよう)があります。ノゴマは主に北海道の原野(げんや)で繁殖します。
このノゴマは、先のコムクドリを観察しているときに同じ場所で見つけました。コムクドリ以上にめずらしい渡り鳥ですが、目立つ場所に姿をあらわすことが少ないので、目にする機会がほとんどありません。
渡り鳥の季節になると、いつも「鳥の道」ということを思います。鳥は海岸線に沿って移動してゆきますが、ある地域では海から内陸に入り込み、谷にそって反対側の海に出てゆくようです。
山陰海岸を西から東に移動してきた渡り鳥の中で、円山川の河口から上流に向かって方向転換する鳥がいると、私は思っています。そしてどんどん上流に向かって、あるものは但東町から山を越えて、あるものは福知山盆地経由で、若狭湾(わかさわん)に出てゆく。毎年の渡り鳥の動きと、地図上の川すじを照らし合わせながら、そんな「鳥の道」が浮かび上がってくるように思われるのです。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信