今年の冬鳥の最後の話題は、サンカノゴイという名のサギ科の鳥。兵庫県レッドリストではCランクですが、それ以上の希少さだと思います。私は今回が初めての観察になりました。これまた、大雪がもたらした結果といえるでしょう。
円山川河口のヨシ原は、降り積もった雪の重みでヨシがすっかり倒れてしまいました。夜行性でヨシ原を隠れ家にしているサンカノゴイは、隠れ場所をなくし人目に姿をさらすことになったのです。
これが最初の出会いの写真です。距離は30mほど。警戒のポーズで、首を伸ばしてヨシに化けているのです。
倒れていないヨシ原の中に逃げ込んでしまうと、鳥の姿は見事にヨシと一体化してしまいます。この写真でサンカノゴイがどこにいるのか、よく探してみて下さい。
継続観察で分かったことですが、実は、同じヨシ原に2羽のサンカノゴイがいたのです。こちらは最初の写真とは別個体です。色が黒っぽいのが特徴です。
サンカノゴイはヨシ原の中を歩くのに適した足をしています。指がとても長く、水上の不安定な場所を音も立てずに歩きながら、水中の魚や甲殻類などを捕まえます。
首は太く長く、警戒ポーズで伸ばすほか、餌を採るときにもこのようにして伸ばします。伸ばしたまま、くちばしを水中で小刻みに動かしていましたが、魚を追い出したり、おびき寄せたりしているのでしょう。
飛んだときのサンカノゴイは、地上にいるときとイメージが変わります。サギというより、鷹のように見えます。あるいは、古代の翼を持った恐竜のようでもあります。
翼を広げると130cmほどの大きさになり、首の長いノスリが飛んでいるイメージでしょうか。
最後の観察となった3月末の写真です。丸で囲んだ2ヶ所にサンカノゴイを確認しました。2羽いたことの証拠写真です。オスとメスのペアであれば、ひょっとしたらこのまま当地で繁殖する可能性も考えられましたが、残念ながらこのあとすぐに姿を消してしまいました。
サンカノゴイは謎めいた鳥です。ヨシ原に潜む夜行性の水鳥ということで、なかなか人目に付かないのがその理由です。居ても分からないのが実情でしょう。大雪は、時として、このような新しい発見をもたらしてくれます。
自然界はまだまだ分からないことだらけ。いろんなチャンスをうまく捉えながら、その秘密にせまってゆくことは意味のあることだと思います。
写真と文 コウノトリ市民研究所 高橋 信