たじまのしぜん

ツバメの災難

コウノトリ文化館の軒下に、ツバメ用の巣台が設置してあります。開放的な施設であるため、繁殖期のツバメは館内に侵入しようと、何度も様子を伺っています。スタッフがツバメ除けの反射テープなどで忌避処置を施すのですが、それでも果敢に侵入してくるものがいます。
せめて軒下で営巣してもらうよう設置された巣台ですが、長いあいだ利用されたことがありませんでした。昨年、ようやくここにツバメが巣を作って抱卵に入りました。もうすぐヒナが生まれるだろうと楽しみにしていた矢先、何者かに巣を襲われてしまいました。
このとき、巣を襲ったのはテンかカラスか、どちらかの仕業と考えました。巣ごと、地上に落とすという乱暴な襲い方は、しかし、犯人はカラスである可能性が高いと思われました。
今年も、同じ軒下巣台にツバメが巣を作りました。

巣作りが終わってしばらくして、抱卵が始まりました。親が抜けたすきに、巣の中を確認しました。5個の卵がありました。
産座には白いフワフワの羽毛が敷いてあります。ひょっとしたら、コウノトリの羽毛かもしれません。ここのツバメは、コウノトリの羽根に抱かれて産まれてくると考えると、なかなか幸せな気分です。

オスとメスは交代で卵を温めます。2週間が経過し、いよいよヒナの誕生が迫ってきました。業務中もときどき巣を見上げて、抱卵中のツバメの姿を確認します。

閉館近くになって、スタッフがツバメの異変に気づきます。2羽が激しく鳴きながら、巣の回りをホバリングで飛び続けていました。地上には、巣材の一部が落下していました。見上げると、巣の一部がひっくり返された形跡が見られました。
この瞬間、「やられた!」と直感しました。巣の中を確かめると、5個の卵は跡形もなく消えていました。ヒナはまだ誕生していなかったように思います。孵化直前といったところでしょう。中では、ヒナが殻を破ろうと力をみなぎらせていたかも知れません。
すぐ近くでカラスが鳴いていました。林の中にはカラスの巣もあります。食べ盛りの「カラスの仔」が巣の中にいるのかも知れません。孵化直前のツバメの卵は、そんなカラスのご馳走になったことでしょう。
それにしても、昨シーズンもそうでしたが、カラスはツバメの巣を襲うタイミングを見事に計算しています。営巣しはじめると、日記でもつけるように、抱卵日数をカウントしているように思うのです。そして、卵の中でヒナが形成され、いよいよ生まれようかというギリギリのところで、巣を襲って卵を奪ったのです。カラスは知能が高い鳥ですが、この計算づくにはびっくりします。
徳島県鳴門市で営巣した若いコウノトリペアの巣から、カラスが卵を持ち去ったニュースが大きく報道されました。無精卵を親が放棄したのを持って行ったようなので、あまりカラスを悪者呼ばわりするのもかわいそうです。コウノトリの郷公園前の祥雲寺巣塔では、今年度の営巣中に4卵のうち2卵がカラスにやられました。親鳥のほんの僅かな油断やスキを、カラスは一瞬のうちに突いてきて、巣の中の卵をさらってゆきます。
2年連続で、コウノトリ文化館軒下のツバメの巣がカラスに襲われ、ここからヒナが巣立つことがありませんでした。カラスにやられる運命の場所を選んでしまったのが、ツバメの不運と思うことにしましょう。自然界は、食う食われるのチェーンで連綿と繋がれています。知恵を使い、幸運を持ち、生きる力に優れたものだけが生き残れる厳しい世界です。
今回の事例では、カラスに襲われる前に人間側が何かヘルプできることがあったのかも知れませんが、その瞬間まで、カラスはまったく近寄る素振りも見せずに、ツバメだけでなく私たち人間にも悟られることなく事に及んだのです。賢いカラスの完勝でした。
次の繁殖に向けて、誘導用の巣台の位置を変えたほうがいいかも知れません。ツバメはシーズン中2回目、3回目の繁殖をします。人とツバメの戦いはまだ続きますし、ツバメとカラスの戦いもまだ続くのです。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信

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