9月終わりの六方田んぼ河谷放鳥拠点ビオトープ、7月末に百合地人工巣塔から巣立ったコウノトリの幼鳥が、エサとりに夢中になっていました。すぐに母親コウノトリもやってきて、親子そろってのエサとりです。
ダイサギが同じ場所でエサをとっていました。コウノトリがくちばしを水中で左右に振りながらエサを探すのに対し、ダイサギは水中の獲物(えもの)の動きを目でしっかり追い、ここぞという一瞬にくちばしを水中に突っ込み、確実にエサを捕らえることができます。コウノトリのエサのとり方は、サギに比べてたいへん効率が悪いのです。
幼鳥がようやく何か見つけました。丸くて黒いかたまりのようなものです。くちばしでつかんで、何度もくわえなおしては水の中に落とす行動を繰り返します。エサとして食べられるものなのか、幼鳥にはまだ分からない様子でした。
観察時には、結局この黒いかたまりの正体が分からなかったのですが、後で写真を拡大してみたらカメの子供であることが分かりました。体の特徴から、外来種のミシシッピアカミミガメであることも分かりました。
昔の但馬ではコウノトリのことをツルと呼んで大事にしてきました。「鶴は千年 亀は万年」と言われ、長寿を象徴するおめでたい生き物とされています。そのツルがカメを食べようとしているのが面白いです。しかも、そのカメが外来種であるところに、現代の自然環境の実態を見ることができます。
幼鳥はさんざんカメの子をくちばしでもてあそんでいるばかりでしたが、見かねた母コウノトリがそれを横取りして、一瞬でパクっと飲み込んでしまいました。横でその様子を見ていた幼鳥は、自分が捕らえたものが食べられるエサであることを、このとき学習したのかも知れません。
野で暮らす親子コウノトリ、飼育員のエサだけに頼るケージのコウノトリとは違ったたくましさが求められます。様々な経験をつみながら、野生で生きる力が育ってゆきます。
(写真はクリックで拡大します)
文・写真 コウノトリ市民研究所 高橋 信