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初雁は6羽のヒシクイ

10月に入ると六方田んぼに初雁(はつかり)の便りが届きます。島根県宍道湖周辺がマガンの主要な越冬地ですが、その旅の途中に当地へ立ち寄ります。この秋の初雁はいつものマガンではなく、6羽のヒシクイでした。晩秋の11月17日、六方田んぼの新田小学校北の田んぼに下りているのを見つけました。

ヒシクイは全身茶色の地味な鳥ですが、兵庫県レッドデータブックではコウノトリと同じ「絶滅種」にランクされる希少種です。カモ目カモ科に属し、細かく分けると亜種ヒシクイと亜種オオヒシクイの2種類がいます。今回の6羽は亜種オオヒシクイ。コハクチョウに比べると小さいですが、全長1m、翼開長1.7mの大型の鳥です。

警戒心がとても強く、車でゆっくり接近しても50m以内に寄ることが難しいほどです。このときも、警戒領域内に入った途端、一斉に飛び立ってしまいました。太いラッパのような声を上げ、翼をキュキュキュと鳴らしながらゆっくりと上昇し、高度を一定保つときれいな編隊飛行となって飛び去ってゆきました。

マガンやヒシクイの当地での滞在期間は、2~3日間と短いのが通常です。休憩と餌の補給を終えると、再び飛び立って越冬地を目指します。今回の6羽のヒシクイは、1週間以上にわたって滞在を続けました。初認から1週間経った再会場所は、円山川下流のひのそ島の川岸。6羽がのんびり水に浮かんでいるところに、上流側からカワウ軍団が潜水を繰返しながら近寄ってきて飛ばしてしまいました。それが最後の目撃となりました。
豊岡盆地では、まだ数が少ないですが、コハクチョウの越冬が定着してきました。コハクチョウに加えて、やがてマガンやヒシクイが越冬するようになれば、冬の寂しい田んぼの風景が一際賑やかになることでしょう。広がる冬季湛水田を眺めながら、そんなことを夢見ています。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信

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